お金を借りる

奨学金を借りるには?様々な借り方から金額ごとの返済例まで解説

進学したいけど、高額な学費や一人暮らしの生活費は用意できそうにない…そんな学生の希望を叶えてくれるのが奨学金です。

なんとなく名前は知っている制度でも、いざ申し込もうと思うと手続き方法や必要な金額など分からないことだらけ。

さらに、奨学金の返済が苦しい人のネガティブニュースを見聞きすると、本当に借りるべきなのか迷う人もいるでしょう。

今回は、そんな奨学金について制度の内容から具体的に必要な金額まで詳しく解説。

奨学金を利用したい人はもちろん、まだ検討段階の人もぜひチェックしてみてください。

Contents
  1. 奨学金を借りる条件は?しくみを解説
    1. 奨学金の種類は大きく分けて5種類
    2. 奨学金を借りるのは親ではなく学生本人
    3. 大学生で奨学金を借りる割合は約半数
  2. 日本学生支援機構(JASSO)で奨学金を借りる方法は3種類
    1. 条件は厳しいが返済義務なしの給付奨学金
    2. 無利子で借りる第一種奨学金
    3. 低金利で借りる第二種奨学金
    4. 海外留学にも同様の奨学金がある
    5. 申し込みの流れと必要書類
  3. 地方自治体の奨学金は条件付きで返還援助あり
  4. 意外と種類が多い財団法人の奨学金
  5. 大学独自の奨学金は内容をよく確認しよう
  6. 住まいや食事が用意される場合もある新聞奨学生
  7. 奨学金はいくら借りる?必要資金の目安
    1. 授業料(学費)は進学先で大きく変わる
    2. 一人暮らしの平均生活費は年間約110万円
    3. 大学生活の費用総額は?必要額をシミュレーション
    4. 奨学金は途中で借りる額を減らせる
  8. 奨学金の返済(返還)は卒業後にスタートする
    1. 毎月の返済額は返還方式により異なる
    2. 完済まで20年は本当?借りる金額ごとの返済期間目安
    3. 返済が厳しい場合は救済措置が利用できる
    4. 奨学金が返済免除になる条件は2つ
  9. 奨学金は借りるべきか?メリット・デメリットを解説
    1. 最大のメリットは利息の低さ
    2. デメリットは返済の負担と入金タイミング
  10. 奨学金を借りるなら返済まで想定して利用しよう

奨学金を借りる条件は?しくみを解説

奨学金とは、学びたい意思があるものの経済的に困難な人が利用できる支援制度です。

そのしくみは大きく分けて以下の3種類があります。

奨学金のしくみ

  • 一定額が給付され返済の必要なし(給付型)
  • 無利子でお金を借りて、卒業後に借りた分だけの金額を返済(無利子貸与型)
  • 有利子でお金を借りて、卒業後に利息込みの金額を返済(有利子貸与型)

奨学金は希望する人が100%利用できるわけではなく、家庭の所得や自身の成績など運営団体ごとに採用基準が異なります。

給付型はどの団体でも最も審査や申し込み基準が厳しく、次に難易度が高いのは無利子貸与、最後に有利子貸与です。

ただし、どれか一つに利用が限定されるのではなく、複数を併用可能としている奨学金もあります。

例えばメインは無利子で、足りない分は有利子で借りる形も可能です。

奨学金の種類は大きく分けて5種類

学校から申し込みの案内があり、多くの人が奨学金としてイメージしているのが日本学生支援機構(JASSO)運営のものです。

ただし、中にはJASSOで希望する奨学金の審査で落とされてしまった、これだけでは足りないといった場合もあるでしょう。

学校から積極的なアナウンスがない場合もありますが、JASSOに加えて以下の4種類の奨学金も利用できる場合があります。

JASSO以外にある奨学金の種類

  • 地方自治体の奨学金制度
  • 財団法人運営の奨学金
  • 大学独自の奨学金
  • 新聞奨学会

詳しくは後述しますが、中には条件付きで返済が免除されたり成績に応じて給付されたり、見逃せない奨学金も少なくありません。

より条件のいい奨学金を利用したいなら、案内を待つだけでなく積極的な情報収集も必要です。

奨学金を借りるのは親ではなく学生本人

奨学金を利用すると多額のお金を借りることとなるため、代わりに親が契約・返済してほしいと考えている人もいるでしょう。

奨学金は契約できるのが学生本人のみで、返済義務も契約者=学生本人にあります。

親が契約者となり返済義務を負うのは教育ローンとなり、逆にこちらは収入のない学生は利用できません。

具体的に、JASSOの貸与型奨学金と日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)の違いを比較してみます。

奨学金 教育ローン
契約者 学生本人 安定した収入のある保護者
保証人 連帯保証人:保護者
保証人:別生計で原則4親等以内の親族
※どちらも必要、または保証期間に保証料を支払い連帯保証を受ける
連帯保証人:別生計で学生の4親等以内の親族
金利 0.605%
※金利固定方式を選び、2022年9月に貸与終了した人の場合
1.8%(固定)
※子どもの人数や年収により-0.4%の金利引き下げあり
振込開始時期 入学に合わせて
※受験費用、入学金には利用不可
最短で申し込み~審査で10日前後、振込までさらに10日前後
※受験費用、入学金として利用可能
返済開始時期 貸与終了の翌月から数えて7か月目の月から
※3月に貸与終了なら10月から
借入の翌月または翌々月のご返済希望日から
※在学期間中は利息のみの支払いも可能

なお、連帯保証人とは契約者と同等に返済の責任が発生する立場で、保証人は返済の要求を拒否できるという違いがあります。

金利の低さや返済開始時期の猶予は奨学金の大きな魅力ですが、振込時期には融通がききません。

どちらにもメリット・デメリットがあるため、保護者とよく話し合うことが必要です。

大学生で奨学金を借りる割合は約半数

奨学金で大金を借りてまで大学や大学院に行くべきなのかと、お金の面で進学に悩む学生も少なくないでしょう。

JASSOの調査によると、令和2年度に短大・大学・大学院で奨学金を受給している人の割合は以下の通りです。

  奨学金受給者の割合
短期大学(昼間部) 56.9%
大学(昼間部) 49.6%
大学院修士課程 49.5%
大学院博士課程 52.2%

短大・大学・大学院と、どこでも半数近くが奨学金を利用して進学・通学しているのが分かります。

奨学金で大学等に進学するのは決して珍しくなく、むしろ大学(昼間部)や短大、大学院修士課程においては前回調査よりも増加傾向です。

参照元:JASSO 令和2年度学生生活調査結果

日本学生支援機構(JASSO)で奨学金を借りる方法は3種類

ここからは、より具体的に5種類の奨学金について解説していきます。

まずは最もメジャーで利用している人も多い、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について見ていきましょう。

JASSOの奨学金は学校を通じて申し込むのが基本で、原則として春と秋の定められた期間に募集を行っています。

貸与型に関しては、秋募集を行わない年度もあるので注意が必要です。

また、進学前に奨学金に申し込む「予約採用」では学校ごとに定められた締め切りがあるため、案内をよく確認しましょう。

JASSOには大きく分けて返済不要の給付型、無利子貸与型の第一種、有利子貸与型の第二種の3タイプがあります。

条件は厳しいが返済義務なしの給付奨学金

学力基準 全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上
※上記を満たさない場合、面談やレポートにより高い学習意欲が確認できること
※在学採用の場合は入学者選抜試験の成績が入学者の上位2分の1以内
家計基準 目安例)
1人親家庭で年収373万円以下
4人世帯で年収378万円以下
※いずれも会社員など給与所得者の基準
支給金額(月額) 自宅通学:9,800~38,300円
自宅外通学:22,300~75,800円

給付奨学金の給付金額は、家計基準により第Ⅰ~第Ⅲ区分に分けられます。

例えば第Ⅰ区分は住民税非課税世帯で、支給される給付金は満額(最高額)です。

家計基準の計算は複雑なため、対象になるかどうかはJASSOの進学資金シミュレーターで目安を確認してみてください。

受給が適格かどうかの審査は毎年行われ、例えば取得単位が標準の5割以下、履修科目の出席率が5割以下だと給付奨学金は廃止されます。

また、受給中に懲戒処分により退学(例えば犯罪を犯したなど)になると、給付金の返還が求められる場合も。

返済不要となる給付金の財源は国費(税金)のため、在学中は真面目に勉学に取り組み、その姿勢を見せなくてはなりません。

一方で、申請すると区分に応じて入学金や授業料の免除も受けられるため、対象となる学生は経済的負担が軽くなります。

無利子で借りる第一種奨学金

学力基準 全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上
家計基準 目安例)
1人親2人世帯で年収774万円以下
2人親4人世帯で年収747万円以下
※いずれも会社員など給与所得者の基準
支給金額(月額) 自宅通学:20,000~54,000円
自宅外通学:20,000~64,000円

無利子で借りられる第一種奨学金は、家計基準が給付金よりも拡大されてはいますが、学力基準は同等です。

この後紹介する第二種と併用する場合、家計基準は60万~70万円程度緩和されます。

無利息のため返済が長期間にわたっても利息分で損をすることはないため、早期返済をと焦る必要がありません。

低金利で借りる第二種奨学金

学力基準 全履修科目の学習成績が平均水準以上
家計基準 目安例)
1人親2人世帯で年収1,036万円以下
2人親4人世帯で年収1,100万円以下
※いずれも会社員など給与所得者の基準
支給金額(月額) 20,000~120,000円

有利子である第二種奨学金は、学力基準も家計基準もこれまでの2つよりも緩やかなのが分かります。

金利は完済まで固定の利率固定方式と5年おきに見直される利率見直し方式があり、2022年現在は後者のほうが低金利です。

どちらの方式でも貸与完了のタイミングによって金利が異なり、例えば2022年7月~9月は以下のとおり月ごとに変動があります。

  貸与完了日
7月 8月 9月
利率固定方式 0.437% 0.468% 0.605%
利率見直し方式 0.009% 0.030% 0.077%

日本がどんなに高金利政策を取ろうと、金利は最高で3.0%までと決められています。

国の教育ローンの金利は先述のとおり1.8%、学生ローンや消費者金融では18.0%程度であることを考えると、有利子とはいえかなり低金利です。

海外留学にも同様の奨学金がある

JASSOには、海外留学に関しても給付型・貸与型それぞれの奨学金があります。

給付型は大学での学士取得や大学院、協定による派遣留学のほか、文部科学省主催の「トビタテ!留学JAPAN」などプログラムが多彩です。

また、貸与型は国内と同様に無利子の一種と有利子の二種がありますが、一種は給付型で大学院学位取得型に採用された人、または協定派遣留学に限られます。

二種は幅広く募集しており、期間が3か月~1年程度の短期留学も対象に。

海外留学の奨学金は毎年9月頃に募集要項が発表され、原則として大学側が希望を取りまとめて応募します。

海外留学の奨学金の利用を検討している人は、一度大学の学生課など窓口で相談してみましょう。

申し込みの流れと必要書類

JASSOの奨学金は、高校や大学に在学している場合は学校経由で募集がかかり、申し込みを行います。

進学前に申し込みを行う予約採用の場合、簡単な申し込みの流れは以下のとおりです。

  1. 春ごろ:学校から申し込みに必要な書類などを受け取る
  2. 学校からスカラネット(JASSOのマイページのようなもの)の申込みに必要なユーザIDとパスワードを受け取り、期限内に入力・申し込む
  3. マイナンバーを提出する
  4. 夏まで:学校に必要書類を提出する
  5. 秋~冬:選考・結果通知
  6. 進学後:進学先の学校に採用候補者決定通知を、JASSOには進学届を提出
  7. 毎年継続して奨学金を利用したい場合、冬ごろに継続願を提出する

手続きにはそれぞれ期限が定められているため、忘れないよう注意しましょう。

なお、申し込み時に必要な書類の一例は以下の通りです。

JASSOの奨学金申し込み時に必要な書類

  • 給付または貸与奨学金確認書
  • 申込資格に関する証明書類
  • 収入に関する証明書類

このほか、社会的養護を受けている場合や生計を担う人が海外在住の場合など、ケースに応じて必要書類が変わります。

用意する書類や記入事項が多いため、余裕を持って準備にとりかかりましょう。

奨学金を借りる理由はどう書くべき?

奨学金の申し込みを行う際、申請理由を書く項目があります。

ただ一言「学費が支払えない」だけでは個別の事情がくみ取りにくく、選考でプラスに働くとは考えにくいです。

一言だけお金が足りないからと書くのではなく、より具体的にお金が必要であること、それでも勉強したいことを訴える必要があります。

お金に関しては、家計の収支や家族構成を明記して経済支援が期待できない・負担をかけたくないことを伝えましょう。

それでも勉強したい分野が明確に決まっており、将来の展望があると伝えることも重要です。

具体的な収入は親に聞きづらい面もありますが、申し込む学生本人が文章を考え、記入するようにしてください。

地方自治体の奨学金は条件付きで返還援助あり

地方自治体の一部では、JASSO同様に無利子や低利子で奨学金貸与、または給付を行っている場合があります。

例えば富山県の富山県奨学資金制度や鳥取県の鳥取県育英奨学資金などがあり、いずれも県内在住など申込基準を満たすことが条件です。

大学生を対象とした奨学金はさほど数がないものの、地方自治体では奨学金の返還支援事業を行っている場合もあります。

奨学生を募集しているのではなく、JASSOなどで奨学金を借りた人を対象に、条件付きで返済を自治体などで負担するといった内容です。

どのような事業があるのか、一例を確認してみましょう。

申込対象者 制度概要
東京都
中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業
登録企業に正規雇用の技術者として就職し、継続して1年以上勤務した人 ・返済額の一部について、登録企業と東京都が1/2ずつ負担して3年間にわたり助成を行う
・金額は3年間で30万、72万、150万円のいずれか
富山県
富山県理工系・薬学部生対象奨学金返還助成制度
・県外在住の理工系学部生、理工系大学院生、薬学共用試験に合格した薬学部生
・対象企業に就職を希望する人
・JASSO第一種または富山県奨学資金の奨学金が対象
・学部生:奨学金総額のうち2年間分の貸与奨学金総額を助成
・大学院生:大学院在学時(2年分)の貸与奨学金総額を助成
・薬学部生:第5~6学年在学時の奨学金総額(2年分)または第1~第6学年在学時の奨学金総額(6年分)を助成
岩手県
いわて産業人材奨学金返還支援制度
・認定企業に就職する高専生・大学生・大学院生
・県外で就業している35歳未満の既卒者
・認定企業に正規雇用で就職、8年間継続して勤務する見込みがある
奨学金の貸与期間に応じて最大70万~250万円を支援

いずれの地方自治体でも、U・Iターンにより若年層の定着を促すために事業を行っています。

地方での就職ではこうした支援を受けられる可能性があるので、就職活動時に調べてみるとよいでしょう。

意外と種類が多い財団法人の奨学金

大企業の中には、基金や財団法人を設立して奨学金の給付を行っているところもあります。

意識しなければ目に触れる機会は少ないですが、返済不要の給付型なら将来の不安も減らせるため要チェックです。

ここでは、対象者が幅広い給付型奨学金を3つピックアップしているので、興味がある制度があれば公式サイトで詳細を確認してみてください。

申込対象者 概要
Z会奨学金 ・Z会指定15大学への進学を希望する高校3年生(6年制学部は対象外)
・人物・学業とも優秀で経済的援助を必要とする人
・募集人員:5名
・入学一時金30万円+月額8万円を、最大4年間で414万円給付
コカ・コーラ教育・環境財団 ・大学に進学予定の高校生
・大学院(修士)に進学予定の大学生
・地球・環境資源関連領域に興味がある人(大学院では学んでいる人)
大学:募集人員20人、月額2万円支給
大学院(修士):募集人員10人、月額4万円支給
公益財団法人東電記念財団奨学金給付 日本国内の大学の博士後期課程へ進学を希望、または在学している人 募集人員:5名程度
月額5万円支給

募集人員は少ないですが、明確な所得制限がないなどJASSOの給付型奨学金よりも応募資格を持つ人は幅広くなります。

Z会のように個人で応募するタイプだと、自分から積極的に動く必要があるため情報収集は欠かさず行いましょう。

大学独自の奨学金は内容をよく確認しよう

私立大学を中心に、学校独自の給付型奨学金の制度がある場合があります。

学業成績を基準に対象者を選定する奨学金が多いので、学校案内やホームページを読み込んで制度があるか確認してみてください。

なお、奨学金と混同しがちな制度に学校提携教育ローンがあります。

大学が斡旋して利用できるローンですが、金利は一般的な奨学金や国の教育ローンよりも高い傾向です。

お金を受け取れるまでが早いなどメリットもありますが、貸付条件はよく確認する必要があります。

住まいや食事が用意される場合もある新聞奨学生

新聞奨学生とは、在学中に新聞配達や集金業務を行い、給与と給付型の奨学金を得る制度です。

毎月の生活費を働いて稼げるだけでなく、入学金や授業料は上限の範囲内で給付されるため、原則として卒業後の返済が必要ありません。

また、住まいを用意してくれたり家賃や食事の補助があったりと、福利厚生面も充実。

経済援助が一切期待できないけど、奨学金を借りて卒業後に返済に追われるのもイヤな人に向いています。

ただし、全国どこでも新聞奨学生になれるわけではなく、主に首都圏など都市部に限られるのがネックです。

各新聞社で対応エリアや制度内容が異なるので、新聞奨学生に興味がある人は公式サイトで概要を確認してみてください。

  特徴
朝日新聞
朝日奨学会
・授業料だけでなく教材費も支給される
・家賃無料または家賃補助あり
産経新聞
産経新聞奨学会(東京)
・配達は朝刊のみ
・集金なしコースあり
読売新聞
読売育英奨学会
・家賃0円の完全個室部屋を用意
・配達エリアがコンパクトで負担が少ない
毎日新聞
毎日育英会
・朝刊のみ、集金なしなど4つのコースから選択可能
・年間を通して多数のイベントを開催
日本経済新聞
日本経済新聞育英奨学会
・全室シャワー・トイレ・エアコン完備の部屋を無料で提供
・就職活動支援として理事長の推薦状発行あり

奨学金はいくら借りる?必要資金の目安

奨学金をいくら借りるべきなのか、受験勉強を進めながら考えるのは難しく漠然と不安が大きくなりがちです。

奨学金がいくら必要なのかは、進学先や一人暮らしをするかしないかによって大きく異なります。

学費と生活費について、シミュレーションで大まかな必要金額を把握しておきましょう。

授業料(学費)は進学先で大きく変わる

まずは学費がどの程度必要なのか、1年間の費用を国公立大学と私立大学(理系・文系)で比較してみます。

  入学金 学費+施設利用料など(年間) 初年度に必要な金額 4年間で必要な金額
国公立大学 282,000円 535,800円 817,800円 2,425,200円
私立大学文系 225,651円 963,341円 1,188,992円 4,079,015円
私立大学理系 251,029円 1,315,233円 1,566,262円 5,511,961円

参照元:e-GOV 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令文部科学省 令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について

学費は大抵の場合前期と後期に分割、または1年分を一括で納付する方法のどちらかです。

ここで注意が必要なのが、入学初年度に必要なお金。

入学前に、入学金と最低でも前期授業料の納付が必要ですが、奨学金の振込は間に合いません。

それまでに貯金や学資保険で資金の準備をしておくか、教育ローンで借りておく必要があります。

一人暮らしの平均生活費は年間約110万円

JASSOが令和2年度に行った調査によると、アパートで一人暮らしをしている大学生(昼間部)の年間生活費は平均で約110万円でした。

自宅から大学に通う学生の年間生活費は約38万円なので、その差額72万円は一人暮らしにかかる費用です。

差額を月額換算すると約6万円となり、アパートの家賃や光熱費はやはり大きな負担となります。

なお、大学生の居住形態の割合についても調査されており、国公立と私立で分けて比較するとその差が歴然です。

  自宅から通学 アパートや下宿など
国立 35.7% 6.2% 58.1%
公立 43.7% 3.3% 53.0%
私立 65.2% 7.2% 27.6%

学費が高い私立大学では、アパート等で一人暮らしをしている大学生は国立の約半数にとどまり、半分以上が自宅通学です。

私立大学なら自宅から通える距離にするなど、金銭面を考慮しての進学先決定となっていることも考えられます。

大学生活の費用総額は?必要額をシミュレーション

学費と生活費が分かれば、大学生活で必要な費用の総額も見えてきます。

ここでは国公立と私立理系・文系の学費に、自宅通学とアパート一人暮らしの2パターンの生活費を足して卒業までの4年間に必要な費用を算出してみました。

  卒業までに必要な金額(4年間)
国公立+自宅 3,945,200円
国公立+一人暮らし 6,825,200円
私立文系+自宅 5,599,015円
私立文系+一人暮らし 8,479,015円
私立理系+自宅 7,031,961円
私立理系+一人暮らし 9,911,961円

最も金額が抑えられる国公立+自宅通学では4年間で約394万円、1か月あたり約8.2万円必要となる計算です。

入学金なども含んだ計算となりますが、この金額なら奨学金だけでも賄える可能性が高いです。

一方、私立理系+一人暮らしは4年間で約991万円必要となり、1か月あたり20.6万円必要なため単独の奨学金ではまず賄えません。

卒業後の返済を考えても、全額奨学金で卒業まで通うのは現実的ではないでしょう。

私立理系で奨学金を利用しながら一人暮らしするには、以下の3つの方法なら実現の可能性があります。

奨学金を利用しながら一人暮らしをする方法

  • アルバイト+奨学金で収入を得ながら通学する
  • 新聞奨学生になる
  • 独自制度のある大学で成績優秀者となり、給付奨学金や授業料免除の対象となる

長時間のアルバイトは学業に支障をきたすだけでなく、無理をして体調を崩しやすくなります。

無理なアルバイトを前提に進学してしまうと、働けなくなるとすぐに生活も学業も破綻してしまうため要注意です。

なお、貸与型・給付型奨学金の平均受給金額は、年額で平均446,956円という結果が出ています。

月額換算で約37,000円、4年に換算すると約179万円となるので、こちらも借りる額の一つの目安としましょう。

参照元:JASSO 令和2年度学生生活調査結果

奨学金は途中で借りる額を減らせる

借りる奨学金の額は、少ないほど卒業後の負担が軽くなります。

ただし、生活が成り立つギリギリの金額に設定すると、例えば体調不良でアルバイトに出られない時などに苦労することに。

奨学金は少し余裕のある金額を借りておき、余るようなら途中で減額もできます。

お金が入ってくるからと無駄遣いは厳禁ですが、卒業までは無利息となるため多めに借りて大きく損をすることはありません。

奨学金の返済(返還)は卒業後にスタートする

JASSOの場合、貸与型奨学金の返済は卒業後すぐではなく7か月後からスタートします。

現在、奨学金の返済は銀行口座からの自動引き落としが基本となるため、給与受取口座を指定すれば返済遅延を起こす可能性は低いです。

毎月の返済額は返還方式により異なる

JASSOでは返済方式を2パターンから選べ、同じ金額を借りていても方式の違いにより毎月の返済額が異なります。

定額返還方式は、名前のとおり完済まで毎月決まった額を返済し続ける方法です。

JASSOの奨学金ならどれでもこの方式が採用でき、返済額が定まっているので資金計画を立てやすいメリットも。

第二種奨学金の金利は、利率固定方式と利率見直し方式の2種類あり、申し込み時点で決めます。

長らく利率見直し形式のほうが低金利ですが、毎月変動するためどちらがお得とは言い切れません。

一方、所得連動方式は所得額に応じて返済額が変動する方式で、第一種奨学金(無利子)のみが対象です。

転職や休職により一時的に所得が減っても、無理のない範囲で返済が続けられます。

完済まで20年は本当?借りる金額ごとの返済期間目安

奨学金を借りると、完済までは30~40代までかかるイメージがあります。

就職したての頃よりも収入が増える世代とはいえ、長期間にわたる返済は奨学金の利用を躊躇してしまう理由の一つです。

ここでは金利1.0%の場合で、借りる金額ごとに毎月の返済額や完済までにかかる年数がどの程度なのかを検証してみます。

貸与される奨学金月額 4年間(48か月間)の奨学金総額 毎月の返済額 完済までの年数
30,000円 1,440,000円 9,892円 13年(156回)
50,000円 2,400,000円 14,428円 15年(180回)
80,000円 3,840,000円 17,737円 20年(240回)
100,000円 4,800,000円 22,172円 20年(240回)
120,000円 5,760,000円 26,606円 20年(240回)

参照元:JASSO 第二種奨学金返還例

JASSOの場合、上記シミュレーションで使用した定額返済方式では奨学金総額に応じて返済回数が自動的に計算されます。

完済までの年数が最大の20年となるのは、毎月8万円以上の奨学金を受け取った場合です。

ただし、毎月の返済額として設定されているのは最低返済額で、いつでもスカラネットから追加で繰上返済手続きができます。

また、余った奨学金も繰り上げで返済できるので、計画的な利用と返済が早期完済のカギです。

返済が厳しい場合は救済措置が利用できる

離職や休職で奨学金の返済にまわせるお金がない場合、JASSOには2つの救済制度があります。

どちらも返済総額が減るわけではありませんが、もし利用せず返済を延滞してしまうと信用情報に傷が付くことに。

最大5年は信用情報機関に記録が残り続けるため、車や家のローン契約、クレジットカード作成の審査時に悪影響を及ぼします。

順調に返済が進められるとは限らないので、救済措置の内容についても詳しく知っておきましょう。

毎月の返済額を減額する減額返還制度

救済内容 ・毎月の返済額を2分の1か3分の1に減額、返済期間を延長できる
・有利子の場合でも利息は増えず返済総額は変更なし
対象者 ・災害や傷病で収入が減少した人
・経済的に返還が困難(年収325万円以下)
・延滞していない、または解消後
・口座振替に加入している
適用期間 1回につき最大12か月間、通算15年(180か月)まで

離職して一時的にアルバイト生活になっていたり、休職中で手取りが減ったりといった場合に利用できる制度です。

返済期間は延長されますが、そのことで支払い総額が増えることはないので損することはありません。

ただし、制度利用中に2回続けて返済が滞ってしまうと適用が取り消され、延滞金が発生してしまうので十分注意しましょう。

一定期間の返済を止める返還期限猶予

救済内容 ・審査により承認された期間について返済を先延ばしにできる
・有利子の場合でも利息は増えず返済総額は変更なし
対象者 収入が途絶えるなどして返済が困難な人
適用期間 最大で通算10年(120か月)まで
※ただし災害や傷病、産休・育休、生活保護、海外派遣などの場合は制限なし

災害など突発的な事情で収入が途絶えた、失職中など返済が困難な場合に、返済を止めて先延ばしにできる制度です。

減額制度と違い、現在延滞中であっても申し込めます。

総額は変わりませんが、返済がそのまま後ろにスライドされるので、完済までの期間がさらに長期化する点は注意が必要です。

奨学金が返済免除になる条件は2つ

返済の猶予ではなく、返済そのものが免除になるケースもあります。

適用されるのはごく一部の人のみですが、奨学金で大学院進学を考えている人は要注目です。

特に成績優秀な第一種奨学金の大学院生

第一種奨学金で大学院に通っている学生のうち、大学から特に優れているとして推薦のあった人は返済免除を受けられる制度があります。

推薦された学生はJASSOの認定委員会に審議され、認定されれば奨学金の全額または半額が免除に。

令和3年度は、大学院修士・博士、専門職学位の課程の合計で以下の人数が認定されています。

貸与終了者数 21,845人
推薦者数 6,917人
全額返還免除 1,728人
半額返還免除 5,075人

引用元:JASSO 認定結果の概要

まずは第一種奨学金の給付を受けるのが一つ目のハードルとなりますが、しっかり勉学に励めば免除は無理だと感じる数字ではありません。

なお、評価の対象は論文や研究成果のほか、芸術やスポーツ分野での成績やボランティア実績など多岐にわたります。

実質的に返還が不可能となった場合

奨学金を受け取っていた人が死亡、精神や身体の障害により労働能力がなくなった・または著しく低下した場合は返還が免除されます。

返還免除願の提出と、死亡または働けないことの公的証明書が必要です。

申請すれば全員が全額免除になるわけでなく、審査により認められれば全額または一部の未返済奨学金が免除されます。

なお、上記理由ではなく返済が困難になり、自己破産を選択すると連帯保証人に返済義務が発生します。

機関保証を利用していれば周囲への影響は最小限ですが、人的保証の場合は多大な影響が出るため慎重に検討してください。

奨学金は借りるべきか?メリット・デメリットを解説

奨学金は多額のお金を借りる性質から、どうしてもデメリットばかりが注目を浴びがちです。

一方で、将来の可能性が広げられるなどメリットも多くあります。

ここでは、奨学金を借りるかどうか判断がしやすいように、メリット・デメリットについて簡単にまとめました。

最大のメリットは利息の低さ

  • 無利息または低金利でまとまったお金が借りられる
  • 返済および利息の発生は卒業後から
  • 給付型や新聞奨学生なら卒業後の返済なし
  • 貸与型でも自治体などの返済支援が受けられる場合あり
  • 経済的に困難でも進学の夢が実現できる

奨学金のなによりのメリットは、有利子でも1.0%以下の低金利でお金を借りられる点にあります。(2022年9月現在)

教育ローンなど、他で一般的に低金利といわれる借り方よりもさらに低いため、学費を借りるのが前提なら奨学金は第一候補となるでしょう。

また、自治体の返還支援などを受けられれば返済の負担が軽減され、給付型や新聞奨学生なら卒業後の返済そのものが原則ありません。

借りる金額に関してはよく検討が必要ですが、必ずしも奨学金=返済に苦労して生活が苦しくなるわけではないことは覚えておきましょう。

デメリットは返済の負担と入金タイミング

  • 初年度納入金の納付期日には間に合わない
  • 連帯保証人・保証人が必要
  • 卒業後は最長20年の長期返済が待っている
  • 返済が遅れればローンやクレジットカード契約に影響が出る

奨学金のデメリットは、やはり返済に関わることに集中します。

人によっては数百万円の負債を背負って社会人生活をスタートさせなければならず、負担感やプレッシャーは少なくありません。

また、入学金や初年度納付金は奨学金の入金タイミングでは間に合わないため、持ち合わせがなければ教育ローンの利用が別途必要です。

計画的な利用と返済が、デメリットを払拭するためには何より重要なポイントとなります。

奨学金を借りるなら返済まで想定して利用しよう

奨学金は、経済的に困難であっても大学で勉学に集中できる制度です。

一般的な貸与型では卒業後に長期にわたる返済がスタートしますが、大学進学で得られる知識や経験は他では代えがたいことも事実。

奨学金を運営しているのは、最も知られている日本学生支援機構(JASSO)以外にもあり、選択肢は一つではありません。

自治体単位で返済支援制度もあるので、もし借りると決めたなら卒業後の返済まで想定して計画的に利用しましょう。